あなたは何点取れる?新型コロナウイルス理解度確認テスト

こんにちは。Wellnessドクターチームの中田です。

新型コロナウイルス感染拡大により、多くの方が不安を抱えています。「自分や家族がかかってしまったらどうしよう」「事業の先行きが不安だ」など、様々な悩みがあると思います。では、どうしたらこの漠然とした不安を軽減できるでしょうか?

漠然とした不安の原因の1つは、「正しい知識の欠如」にあります。実際の現状やリスクを正確に把握することで、自分が取るべき行動は明確になります。また新型コロナウイルスはヒトからヒトへ感染する感染症であり、全ての人が適切な知識を持ち、協力し合うことが不可欠です。

日々多くの情報が錯綜する中で、何が正しいか分からなくなっている方も多いと思います。この記事では『テスト』を通じて、新型コロナウイルス感染症に関する正しい理解を深めましょう。

新型コロナウイルス理解度確認テスト

1, 新型コロナウイルスの正式名称はどれか。

a, SARS

b, MERS

c, SARS-CoV-2

d, COVID19

解答:c

新型コロナウイルスの正式名称はSARS-CoV-2です。このウイルスに感染することによって引き起こされる感染症のことを、COVID-19(coronavirus disease 2019)としています。名称を混合している記事が増えているため、誤った解釈をしないように注意しましょう。

2, 新型コロナウイルスの感染経路として誤っているものはどれか。

a, 飛沫感染

b, 接触感染

c, 空気感染

d, エアロゾル感染

解答:c

SARS-CoV-2の感染経路は主に飛沫感染・接触感染ですが、他にエアロゾル感染の存在を示唆する研究が出ています。ただし、医療機関等の特殊な環境を除き、エアロゾル感染は日常生活の中ではほとんど起こりません。咳エチケットや手指消毒といったスタンダードプリコーションがやはり重要です。

なおSARS-CoV-2は麻疹・結核・水痘と異なり空気感染はしないため、遠くにいる人に感染するリスクはありません。言い換えれば、適切な距離を取ることが予防になるということです。

3, 一般家庭における新型コロナウイルス感染拡大予防として誤っているものはどれか。

a, 石鹸での手洗い・手指エタノール消毒

b, 咳エチケット

c, Social Distancing(外出自粛)

d, N95マスク着用

解答:d

一般家庭において行うべき感染対策は非常にシンプルで、①手洗い・手指消毒、②咳エチケット(マスク着用を含む)、③Social Distancing(病原体との接触回避)の3つです。様々な商品が売られていますが、エタノール消毒以外のものにエビデンスはありません。なお空気感染はしないので、医療機関など特殊な環境でなければN95マスクの着用は必要ありません。

4, 報告済みの新型コロナウイルス感染症重症化リスクとして、誤っているものはどれか。

a, 慢性副鼻腔炎

b, 心疾患/脳血管疾患

c, 喫煙

d, 糖尿病

解答:a

COVID-19重症化リスクとして現在報告があるのは、喫煙、高血圧、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病です。他に免疫抑制剤使用中の方などは注意が必要と考えられるため、有症状時の相談のタイミング等については主治医の指示をもらうと安心です。

日頃の健康を維持しておくことが大切ということを改めて痛感しますね。禁煙や減量を考えている方は、これを機に是非トライしましょう。また外出自粛の中で運動量が減ることが予想されるため、自宅でできるトレーニングを習得したり、食習慣を見直したりすることも大切です。

5, 新型コロナウイルスを示唆する症状として、誤っているものはどれか。

a, 発熱

b, (他症状に先行する)味覚/嗅覚異常

c, 胸痛

d, 乾性咳嗽(乾いた咳)

解答:c

新型コロナウイルスにおける症状を報告した論文では、発熱(98.6%)、疲労感(69.6%)、乾性咳嗽(59.4%)などの症状を呈するケースが多くなっています。また最近では、感冒症状に先行して味覚異常や嗅覚異常を呈するケースが散見されることが分かってきました。

採血ではLymphopenia(70.3%)、PT延長(58%)、LDH上昇(39.9%)といった特徴があります。他、胸部CTでも特徴的な所見がみられます。

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2761044?guestAccessKey=f61bd430-07d8-4b86-a749-bec05bfffb65

6, PCR検査について正しい記述を一つ選びなさい。

a, 検査回数を繰り返せば、感度や特異度は上がる

b, 無症候・非濃厚接触の健常者も含め、全ての人に検査を行うべきである

c, PCR検査の感度が低いということは、偽陰性が多いことを意味する

d, PCRはウイルスゲノムを検出するため、一般に感度は高く、特異度は低い

解答:c

PCRとは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、『現在ウイルスが体内にいるか』が分かる検査法です。一般的に感度は低く特異度が高い(偽陰性は多いが偽陽性は少ない)という特徴があります。感度(感染者を陽性と正しく検出する割合)と特異度(非感染者を陰性と正しく検出する割合)は検査の精度(特性)であり、検査回数を繰り返したからといって変化しません。つまり、一定の割合で偽陽性や偽陰性の患者が出てくることになります。

最近発熱者の外来をしていると、「PCR検査をしてほしい」「会社で、コロナでないことを診断してもらってこいと言われました」と訴える患者さんとよく出会います。しかし、PCR検査によって感染を否定することは非常に難しいです。なぜなら感度が低い(70%程度)から。検査が陰性だからと言って、感染がないことを証明することはできません。

また、「無症状者も含めて全員にPCR検査をすべきでは?」という意見が最近増えています。確かに無症状者からの感染を防ぐために、陽性者を早い段階で特定することは感染拡大防止に有効かもしれません。しかし2つの点からこの意見には慎重になる必要があります。

①まずPCR検査で偽陰性が出る要因として「検体の質が悪いこと(手技不良)」が挙げられます。医療資源(検査に慣れている、医師を含む医療従事者の数)が限られていることを考えると、検査対象者が急激に増えると検体採取の質は低下する可能性があります。また処理中のhuman errorによって検体が混じり、偽陽性が出てしまうといったことも起こり得ます(既に報告あり)。

②またあらゆる検査について言えることですが、検査を行う場合には必ず、『検査を行った後どうするか』を検討するべきです。COVID-19の場合は無症状感染者が一定数いることが報告されているため、これらの人々をどうするかを考えなければなりません。日本の病院に残られた感染者用病床数を考慮すれば、無症状者や軽症者を含めた全員を病院に入院させることは現実的ではありません。いくつかのホテルがこれらの感染者の宿泊に協力していますが、まだ「症状のない人も含めた全員を検査した場合の陽性者全員」を隔離対応するだけのキャパシティはありません。またすでに何度も指摘の通り感度が低いため、陰性であったとしても全く安心することはできません。検査前確率(有病率)を無視して検査を行うことによるメリットが限定的なのです。

上記のように、検査の対象を決めるというのは非常に難しくデリケートな問題なのです。臨床的判断を伴わない安心のための無差別検査は、100%の検査がない以上、基本的には推奨されないのです。

(※)PCR検査の他に「抗体検査」という検査も最近話題になっています。抗体検査が陽性の場合、「既に感染したが完治した人」でも陽性になるため、他者に対する感染力を持っているかどうかは判別できません。

7, 帰国者・接触者相談センターに相談すべき症状として誤っているものはどれか。

a, 普段は健康だが、38度の発熱と咳が4日以上続いていて心配

b, 普段は健康だが、一昨日から発熱があり、息苦しさ(呼吸困難感)があって心配

c, 普段は糖尿病で薬を飲んでいて、3日前から37.5度以上の発熱が続いていて心配

d, 普段は健康で2ヶ月前に中国から帰国したが、昨日から38度の熱が出ていて心配

解答:d

37.5度以上の発熱が4日以上続く場合や呼吸困難感がある場合は、帰国者・接触者相談センターへの電話相談を考慮します。また高血圧や糖尿病といった基礎疾患がある場合には重症化のリスクが高いため、2-3日続いた段階で相談することを検討します。病院は感染リスクが高い空間なので、自宅安静で様子をみれる状態であれば受診するデメリットがメリットを上回ってしまう可能性があります。強い呼吸困難感がある場合などを除いて、受診前に相談することが推奨されます。

また海外渡航歴は非常に重要な情報ですが、潜伏期間は1-14日と考えられており、数ヶ月前の渡航歴はほとんど関係ありません。

8, 新型コロナウイルスに関するリテラシーとして、正しいものはどれか。

a, 市販の手袋は清潔であり、スーパーやコンビニの店員は着用すべきだ

b, 医療機関等で適切に感染防護具を着用している場合、COVID19患者に診療を行なっても濃厚接触者には当たらない

c, 感染時にイブプロフェンを内服すると重症化するため、内服はやめるべきだ

d, 「自分は感染しても死なない」と思うので、ワクチンが開発されても打たない

解答:b

各選択肢について見ていきましょう。

a, × 最近感染対策を意識してか、手袋を着用して接客をされている飲食店やスーパーの方を見かけます。こまめに付け替えるのであれば確かに有効な感染防御策となりますが、そもそも市販の手袋は滅菌されていないため清潔ではありませんし、長時間同じものをつけているのであれば感染予防効果はほぼ0です。

b, ○ 厚労省のHPを見ても分かる通り、医療機関等で適切に感染防護具を着用している場合は、COVID19患者に診療を行なっても濃厚接触者には当たりません。最前線で働いている医療従事者に対する差別的発言が問題になっていますが、適切な感染防護を行った上で人命救助に当たっている人を卑下する行為は言語道断です。

c, × 最近、「イブプロフェンは新型コロナウイルスを増殖させるため飲んではいけない」というチェーンメールのようなものが出回っているようです。しかし、イブプロフェンがCOVID-19の重症化を助長するエビデンスはなく、WHOもこれを否定しています。デマ情報に騙されないように気をつけましょう。

d, × ワクチンは発症を100%予防できるわけでなくとも重症化を抑制することができます。また、多くの人が接種することで他者への感染拡大を抑制できる「集団免疫」という概念も重要です。

【関連問題】

9, ワクチンが開発されているウイルス感染症として誤っているものはどれか。

a, 風疹

b, HPV感染症(子宮頸がんetc.)

c, インフルエンザ

d, ノロウイルス

解答:d

風疹ウイルス、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザウイルスは既にワクチンが開発されています。しかし、残念ながら十分な接種は進んでいません。

例えば風疹ウイルスが妊娠初期の妊婦に感染した場合、生まれてくる子供は先天性風疹症候群(心疾患、難聴、白内障)という先天性疾患を患います。妊婦自身がワクチン接種を事前に行うことも重要ですが、集団免疫の観点からはあらゆる人がワクチンを接種しておく必要があります。しかし日本の壮年期男性ではワクチン未接種の方が多く、社会的課題となっています。また日本ではHPVワクチンの接種が激減しており、今後子宮頸がん患者が増加していくと予測されています。今回のCOVID-19流行をきっかけに、予防可能な疾患のワクチン接種が広まることを期待します。

10, COVID19重症化リスクを下げるための行動として正しいものはどれか。

a, 禁煙

b, 高濃度ビタミンC点滴

c, 血液クレンジング

d, リンパマッサージ

解答:a

重症化リスクを下げるためには、高血圧や糖尿病といった重症化のリスク因子に対する治療をしっかり行うことに加え、禁煙が重要です。ビタミン点滴、マッサージ施術等については抗酸化ストレスの軽減や自律神経調節による効果は100%は否定できないものの、重症化リスクを下げることを示唆する十分なエビデンスはありません。むしろこれらの処置を受けるために外出することは不要不急の外出にあたり、感染拡大を助長してしまう可能性があります。「免疫力を高める」ことを証明することは非常に難しいのです。バランスの良い食事や適度な運動習慣、十分な睡眠といった基本的な健康行動をとりつつ、今はSocial Distancingを優先しましょう。

「免疫力を高める」を根拠を持って語ることは非常に難しいです。少なくとも、慢性的なストレスによるコルチゾール上昇が免疫を抑制することなどは分かっていますが、サプリや健康食品で簡単にこれらを解消できるかどうかはまだ分かっていません。

https://journal.wellness.jp/2020/04/07/care-0002/

まとめ

さて、あなたは何問正解できましたか?毎日とてつもない数の情報に晒されてしまいますが、不要な不安やパニックを避けられるよう適切な知識を身につけ、自分で考えて行動できるようにしましょう。COVID-19と戦う最善策を求めて多くの研究者が尽力していますが、本当は何が正しいのか、まだ誰にも分からないのです。客観的な事実を吸収した上で、意見の異なる人を叩いたりすることなく、各々がモラルのある行動を取れるといいですね。

ウイルスとの長い戦いになりますが、頑張りましょう。

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