自宅で胃癌予防ができる?ピロリ菌検査を医師が解説!

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大に伴い、遂に日本でも緊急事態宣言がなされ、外出自粛が強化されることとなりました。スポーツジムやヨガスタジオの営業も次々と中止されており、日々の健康行動のルーティーンが損なわれないよう、ますます注意が必要です。

一方、今回の自粛を良い機に、自宅でできる予防行動もあります。その1つが『ピロリ菌検査』です。この記事では、誰もが一度は耳にしたことがあるピロリ菌検査の意義や種類について、徹底的に解説します。

ピロリ菌とは

胃がん患者の99%はピロリ菌に感染している

ピロリ菌

胃がんは日本人のがんによる死亡の大きな割合を占める重要な疾患です。2018年の統計では、およそ45,000人が胃癌によって命を落としており、男女を合わせるとがん死因の3位に位置付けられています(2018年時点では1位は肺がん、2位は大腸がん、3位は胃がん)。

そして胃がん患者の99%はピロリ菌に感染していることが分かっています。勿論ピロリ菌に感染したからといって必ずしも胃がんになるわけではありませんが、感染している人は、感染していない人と比べると5-10倍の胃がん発症リスクがあります。

このため、胃がんを予防するためには、ピロリ菌感染の有無をなるべく早い段階でチェックし、感染している場合には速やかに除菌することが重要です。

特にピロリ菌注意なのは、井戸水を飲んでいた人

ピロリ菌感染の多くは、免疫力の低い幼児期(5-6才)に、井戸水を飲むことによって成立します。地方出身で井戸水を飲んで育った方は、特に感染している可能性が高いです。ピロリ菌感染があっても何らかの症状が出現するケースは3割程度しかないと言われており、誰もが一度は検査をした方が良いと考えられます。

ピロリ菌は口移しなどによって経口感染する可能性もあるため、小さなお子さんがいる方は、子供に感染させないためにもピロリ菌検査を受けておく(感染しているなら除菌しておく)ことが非常に重要です。

なお、大人になってから感染することはほとんどないことが分かっているため、成人してから一度ピロリ菌検査を受けて陰性であれば、何度も繰り返して検査を受ける必要はありません(ただし、胃内視鏡検査は時々受けましょう)。

ピロリ菌は胃がん以外にも様々な病気を起こす

ピロリ菌感染によってリスクが上がるのは、胃がんだけではありません。慢性胃炎(萎縮性胃炎) 、胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)といった様々な病気の原因になることが分かっています。胃の調子が普段からあまり良くないという人は特に、ピロリ菌検査をなるべく早く受けることを検討しましょう。

萎縮性胃炎と胃がんの関連

ピロリ菌感染の後に起こる萎縮性胃炎と胃癌のリスクについて調べると、ピロリ菌が陰性であっても萎縮性胃炎によって胃癌リスクが3.8倍と上昇し、萎縮の程度がひどいほど胃癌のリスクが上がるということが分かり、最も胃癌リスクが高いのは、ピロリ菌が陽性でかつ萎縮性胃炎がある方でした。つまり、胃癌の予防にはピロリ菌検査を行うだけでは不十分で、内視鏡検査によって萎縮性胃炎(慢性胃炎)の有無を定期的にチェックすることも重要と言えます。

国立がん研究センター:https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/287.html

ピロリ菌検査の種類

胃がんを予防するためにはピロリ菌検査が不可欠というお話をしました。しかし、ネットでピロリ菌検査を調べると非常にたくさんの種類の検査が出てきて、どの検査がいいか迷うところでつまづいてしまいます。ここでは全ての検査について細かく説明するのではなく、目的に応じて検査を使い分けるためのポイントを押さえましょう。

辛い検査と辛くない検査がある

ピロリ菌検査には胃内視鏡検査を伴う辛い検査(侵襲的検査)と、内視鏡を使わない検査(非侵襲的検査)の大きく2種類があります。非侵襲的検査には、「尿素呼気試験」「血中抗体測定法」「尿中抗体測定法」「便中抗原測定法」の4種類があります。それぞれ検査の精度(感度・特異度)は少しずつ異なりますが、除菌前の段階であればそれほど大きな違いはありません。ただし、タイミングによって選んでいい検査と選んではいけない検査があることには注意が必要です。

一言memo:辛い検査がいいとは限らない

何となく辛い検査(侵襲的検査)の方が信頼度が高いような気がしてしまうかもしれませんが、内視鏡検査では粘膜をつまんだ部分に菌が入っていなければ偽陰性(本当は胃のどこかにピロリ菌がいるのに、陰性になってしまう)となります。採取した検体を調べる方法によって精度は異なりますが、何れにせよ非侵襲的検査より優れているということはありません。特に胃潰瘍などがない健康な人が検査するのであれば、非侵襲的検査を選ぶ方が無難でしょう。

ピロリ菌検査の感度と特異度:http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/67.html

除菌前と除菌後で選ぶべき検査は異なる

ピロリ菌検査で陽性だった場合は、病院で除菌の治療を受けることになります。そしてこの効果を判定するため、ピロリ菌検査は除菌が終わった後にも検査を受けることになります。しかし除菌前と除菌後では、適切な検査が異なるのです。

これは、『ピロリ菌自体の存在を調べる(抗原)検査』と、『ピロリ菌と戦った形跡を調べる(抗体)検査』の二種類があるためです。除菌を行なった後にはピロリ菌(抗原)はいなくなっていますが、ピロリ菌と戦った形跡(抗体)は残っているのです。つまり、「血中抗体測定法」や「尿中抗体測定法」は除菌後に選んではいけません。逆に、除菌検査であればどの検査を選んでも大きくは変わりません。

家で検査したいなら、採血検査か便検査

検査はその精度が非常に重要ですが、最近では利便性(簡単に受けられるかどうか)も重視されるようになっています。外出自粛の現在、自宅で簡便にできる検査で胃がん予防に取り組むことには価値があるでしょう。現在自宅でできる検査は、「①指先に針で小さな傷をつけて自己採血し、抗体の有無を調べる方法(血中抗体測定法)」と、「②便を採取して菌(抗原)の有無を調べる方法(便中抗原測定法)」の二種類があります。大きく精度に違いはないため、好きな方を選べば良いでしょう。Amazonなどで「ピロリ菌検査」と選べば、たくさん出てくるので是非ご検討ください。

人間ドックで受けるなら、尿素呼気検査がおすすめ

簡便かつ精度が高いという理由で、多くのクリニックや人間ドックでは尿素呼気試験を行うことが多いです。毎年の人間ドックのついでで検査したいという方は、この方法を勧められることがあるかもしれません。存在診断だけでなく、除菌後の判定にも利用できることから、医療機関では好まれている印象があります。

ただし、人間ドックで採血をしたついでに手間をかけず血中抗体測定法で調べてもらう、自宅で簡易的に検査する、というのも決して間違っていはいません。何れにせよ100%の検査はないので、利便性をとるか、精度をとるかのバランス次第です。迷ったらかかりつけの医師に相談しましょう。

まとめ

外出自粛の今だからこそ健康に向き合う

さて、今回は胃がん予防のために大切な「ピロリ菌検査」の種類についてまとめました。外出自粛でなるべく病院に行きたくないと思っている方も多いと思いますが、ピロリ菌検査は家でもできるとても大切な予防行動です。検査をしたことがない方は、これを機に自宅検査キットを試してみてはいかがでしょう?

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